「尿検査異常を放置していませんか?」
皆さんのなかで、健康診断や人間ドックの検査を受けた際、尿検査で異常を指摘されたものの、毎年指摘されていることだし、病院へ行くのは面倒だから行っていない方はいませんか?
また、”尿検査異常につき、病院で精密検査を受けましょう”といった指示に従い、医療機関を受診したものの、詳しい検査をされずに心配ないと言われた方はいませんか?
これらは実に危険なことです。今や国内ではおよそ31万人(400人に1人の割合)の方が末期腎不全のため、透析療法を受けておられます。ほとんどの透析患者さんは尿検査異常から発病しています。腎臓病の初期の段階では、尿検査において異常所見を認めていても自覚症状がないことが多く、特に血液での腎機能検査(血清クレアチニン)がない場合、医療機関を受診されてもそのまま放置されるケースも多くあります。腎臓病はむくみやだるさ症状を呈したり、血液での腎機能検査が異常になる頃は相当悪化してしまっていることが多いため、そうなる前に早期発見することが大切です。残念ながら慢性腎臓病では、腎機能がある程度まで低下してしまうと、腎臓はもとに戻ることはありません。
尿検査異常には血尿(尿中に血液中の赤血球が漏れ出ている状態)のみ、蛋白尿(尿中に蛋白が漏れ出ている状態)のみ、血尿および蛋白尿の両方を認めるものがあります。血尿を主に認められる場合、泌尿器系の癌、結石、膀胱炎、前立腺炎などが原因として考えられます。特に血尿と蛋白尿の両方を認めた場合は要注意です。慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症などの腎臓の病気、高血圧による腎障害、膠原病による腎障害を発症している可能性があるため、十分な検査を受けていただく必要があります。
そして、腎臓病を発症した際は、日々の生活習慣の改善、食事療法や薬物治療による血圧管理、貧血改善、脂質や糖代謝管理、塩分摂取制限などを総合的に行うことが必要となります。万一、すでに腎機能が低下している場合には、腎機能低下の進行を遅らせる治療が必要であり、この場合も総合的な管理が必要になります。
(ワンポイントアドバイス)
尿検査異常を認めた場合には、近くの医療機関を受診していただき、詳しい検査をしましょう。